高校のときに疑問に思ったことから話をはじめます.

疑問

複素数 \(i\) は二乗すると-1になる数字として定義された. そのとき, \(-i\) なる複素数を考えると, 二乗すると -1になった. これは矛盾ではないか?

教師の回答

\(i\) は二乗して-1になる数の一つだから, これでいいんだ.

僕の心の中(それは\(i = -i\)なる可能性を消せてないよなぁ)

代数的な解決

複素数とは二つの実数の組であって, 積が

\[(a_1, a_2) \cdot (b_1, b_2) = (a_1b_1 - a_2b_2, a_1b_2 + a_2b_1)\]

で定義された数である.

このとき, \((a_1, a_2)\) のことを \(a_1 + a_2 i\)と書く.

なお, \((a_1, 0)\)を実数\(a_1\)と同一視する.

( より厳密には, なぜ同一視できるかというと, 群の準同型

\[\mathbb{C} \to \mathbb{R}; a_1 + a_2i \to a_1\]

があるからです. )

これで \(i \neq -i\) が簡単に分かる.

この疑問から分かること

この疑問はいわば”数直線から複素数を見たときに\(i\)と\(- i\)は同じにみえる” ことから来ています.

つまり, 実数の問題の答えとして複素数が現れたとき, 答えの複素数\(z\) があらわれれば共役(\(i\)と\(-i\)をひっくり返した数)が現れます.

このような問題の例を考えてみましょう.

問題: 実数を係数とする2次方程式

\[ax^2 + bx + c = 0 \ (a \neq 0, b^2 - 4ac < 0)\]

の解を求めよ.

回答: 2次方程式の解の公式より

\[\begin{align} x &= \frac{-b \pm \sqrt{b^2 - 4ac}}{2a} \\ &= \frac{-b \pm \sqrt{4ac - b^2}i}{2a} \end{align}\]

となる. ☐

よって, 複素数\(z\)が上のような2次方程式の解ならば \(\bar{z}\) も上のような2次方程式の解になっていることがわかります.

実際には, 上のようなことは\(n\)次方程式で言えます. 以下はその証明です(これって高校でやりましたっけ?).

補題 実係数\(n\)次多項式\(f(x)\)と複素数\(z\)に対して

\[f(\bar{z}) = \overline{f(z)}.\]

証明 まず, 複素数\(z_1, z_2\), 自然数 \(n\) に対して

\[\begin{align} \overline{z_1 + z_2} &= \bar{z}_1 + \bar{z}_2 \\ \overline{z_1 z_2} &= \bar{z}_1 \bar{z}_2 \\ \overline{z_1^n} &= \bar{z}_1^n \end{align}\]

が成り立つことに注意します(最初と二番目の式はそれぞれ実部と虚部に分けて計算を するとすぐ示すことができます).

ここで,

\[f(x) = \sum_{j=1}^n c_j x^j\]

と表しておきます. すると, 前の補題を繰り返し使うと

\[\begin{align} \overline{f({z})} &= \overline{\sum_{j=1}^n c_jz^j} \\ &= \sum_{j=1}^n \overline{c_jz^j} \\ &= \sum_{j=1}^n c_j \overline{z^j} \\ &= \sum_{j=1}^n c_j \bar{z}^j \\ &= f(\bar{z}) \end{align}\]

が成り立ちます. ☐

これからすぐに次を示すことができます.

主張 実係数\(n\)次多項式\(f(x)\)と複素数\(z\)に対して\(z\)が方程式\(f(x)=0\)の解の一つならば \(\bar{z}\)も方程式 \(f(x) = 0\)の解の一つである.