先日式変形チャンネルさんの絶妙な差の2数を1つの図から無限に作り出す方法という動画を見ました.

幾何学的に 絶妙な差の二数を見つける方法で, とても面白かったです. が, 「絶妙な差」の評価が明示的に言われてなかったので ちょっともやもやしたので, 少し考えてみました.

式変形チャンネルさんは

主張: $a, b, k$を0以上の実数とする. そのとき $$ a + kb \le \sqrt{(k^2 + 1)(a^2 + b^2)}. $$

という 主張を使っていました.

そこで, $a + kb$ と $\sqrt{(k^2 + 1)(a^2 + b^2)}$の差について考えてみました.

幾何学的に$ka$と$b$が近ければ この二つの値は近いということでした. 考えてみると やはりそのような不等式ができました.

主張: $a, b, k$を0以上の実数とします. このとき $$ \sqrt{(k^2 + 1)(a^2 + b^2)} - (a + kb) \le |ka - b|. $$
証明: まずは$\sqrt{(k^2 + 1)(a^2 + b^2)}$と$a + kb$の二乗の差を考えてみます. $$ \begin{align} (k^2 + 1)(a^2 + b^2) - (a + kb)^2 &= k^2a^2 - 2kab + b^2 \\ &= (ka-b)^2. \end{align} $$ これより $$ \sqrt{(k^2 + 1)(a^2 + b^2)} = \sqrt{(ka - b)^2 + (a + kb)^2} $$ が分かります.
次に0以上の実数 $x, y$に対して $\sqrt{x + y} \le \sqrt{x} + \sqrt{y}$が成り立つことを示します.
$x = 0$のときは明らかなので $x \neq 0$とします. $$ \begin{align} \sqrt{x + y} \le \sqrt{x} + \sqrt{y} \\ \Leftrightarrow \sqrt{1 + \frac{y}{x}} \le 1 + \sqrt{\frac{y}{x}} \end{align} $$ なので, $y/x$を再び$x$と置いて $$ \sqrt{1 + x} \le 1 + \sqrt{x} $$ を示します. 前と同様に$x = 0$のときは自明です.
$f(x) = 1 + \sqrt{x} - \sqrt{1 + x}$とおきます. すると $$ \begin{align} f^\prime(x) &= \frac{1}{2} (\frac{1}{\sqrt{x}} - \frac{1}{\sqrt{1 + x}}) > 0 \end{align} $$ が成り立ちます.
よって $f(x) \ge 0$ が分かりました. f(x)のグラフ
以上より $ \sqrt{(k^2 + 1)(a^2 + b^2)} = \sqrt{(ka - b)^2 + (a + kb)^2} $が成り立っていたことを思い出すと $$ \begin{align} \sqrt{(k^2 + 1)(a^2 + b^2)} &\le \sqrt{(ka - b)^2} + \sqrt{(a + kb)^2} \\ &= |ka - b| + a + kb \end{align} $$ が成り立つことが分かります. 以上によって, $$ \sqrt{(k^2 + 1)(a^2 + b^2)} - (a + kb) \le |ka - b|. $$ が成り立つことが分かりました.
最後に, 上の動画で紹介されていた 具体例について上の評価式を用いて 差を評価してみましょう.
$k = \sqrt{2}, a = \sqrt{19}, b = \sqrt{39}$とおいて 式変形チャンネルさんの不等式に代入すると $$ \sqrt{19} + \sqrt{78} \le \sqrt{174} $$ という不等式を得ることができます.
計算機で8桁まで計算すると
$$ \begin{align} \sqrt{19} + \sqrt{78} &\approx 13.190660 \\ \sqrt{174} &\approx 13.190906 \end{align} $$ であり, $$ \begin{align} \sqrt{174} - (\sqrt{19} + \sqrt{78}) &\approx 0.00024614840 \end{align} $$ が成り立ちます.
一方, 今回作った不等式を使うと $$ \sqrt{174} - (\sqrt{19} + \sqrt{78}) \le |\sqrt{38} - \sqrt{39}| = \sqrt{39} - \sqrt{38} \approx 0.080583995 $$ が分かります.
追記: $x, y$を0以上の実数とします.
上で $\sqrt{x + y} \le \sqrt{x} + \sqrt{y}$を微分を使って証明しましたが, もっと簡単な別解を見つけました.
直角三角形の図
上のように 原点$O(0, 0), A(\sqrt{x}, 0), B(\sqrt{x}, \sqrt{y})$を頂点とする直角三角形$OAB$を考えます.
すると 三角不等式より $$ d(O, B) \le d(O, A) + d(A, B). $$ すなわち $$ \sqrt{x + y} \le \sqrt{x} + \sqrt{y}. $$